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2023.01.31 ご挨拶

【2023年・年頭所感】秋澤淳

 2022年は日本のエネルギーセキュリティの脆弱性が露わになった年でした.ウクライナ紛争が始まる以前から燃料の価格高騰が始まり,大幅に燃料費が高くなりました.電気代やガス代,燃料代が上昇したことは社会的にもダメージを与えました.幸いにもヨーロッパが暖冬で,天然ガスの価格は高騰前の水準に戻ったとの報道もあります.
 日本は大部分のエネルギーを輸入に頼っています.国産のエネルギーは水力を始めとする再生可能エネルギーだけです.そのため,海外の政治状況や為替などの経済状況の影響を直接的に受けてしまいます.再生可能エネルギーは単にCO2排出量を抑えるだけでなく,我が国の本質的課題であるエネルギーセキュリティに大きく貢献する点にもっと注目する必要があります.発生頻度が小さくても地震や津波の対策をするのと同様に,再生可能エネルギーの比率を高めておくことは,国家規模での万が一への備えに他なりません.
 環境省の再生可能エネルギーに関するデータベースREPOSによると,再生可能エネルギーによる発電ポテンシャルは,低位推計でも現在の日本の電力消費量1兆kWhと量的に同等であると示されています.日本は土地が狭いとか,条件が不利だとか言われていますが,決してポテンシャルが少ないわけではありません.考えるべきことは,このポテンシャルをいかに引き出すか,いかにバリアを取り除くかです.再生可能エネルギーを開発することが国を強くし,エネルギーセキュリティを高め,結果として国際的な競争力につながります.
 分散型エネルギー技術の代表格であるコージェネレーションについては,建物が発電や熱供給の能力を持つことがレジリエンスを高めると認識され,建物の賃貸料にも好影響を与えるのではないかとの議論があります.地域に再生可能エネルギーを導入することもそれと同じです.地域のレジリエンスを高め,地域の付加価値(安全・安心,脱炭素など)を向上させることが見込めます.外部環境に依存して不確実性のある従来型技術に比べ,再生可能エネルギーは自分達がコントロールできる確実な選択肢であると言えます.
 2023年が地域で再生可能エネルギーを活用するスタートダッシュの年になることを期待しています.