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2022.01.01 ご挨拶

【年頭所感】歌川学

 2020年から2021年に日本の温室効果ガス排出削減目標が強化され、2050年に排出実質ゼロ、2030年に46%削減(2013年比)、さらに50%の高みをめざすとの目標が出されました。2030年までの大きな削減、2050年ゼロにむけた具体的対策・政策が課題となっています。2030年目標は1990年比40%削減、2010年比42%削減に相当し、強化されたEUや米国の1990年比の目標より低く、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)1.5℃特別報告書が1.5℃抑制のための世界のCO2削減率「2030年45%削減」(2010年比)とほぼ同じです。日本は人口比CO2排出量が世界平均の2倍あることを考えると、目標について今後も議論があるでしょう。
 その後世界で排出ゼロ・2030年目標強化の議論が続きます。IEA(国際エネルギー機関)は「2050年排出ゼロへの道筋」でエネルギーセクターの2050年排出実質ゼロは技術的に可能とし、「先進国が2030年に対策のない石炭火力発電を廃止する」などの排出実質ゼロに至るマイルストーンを示しました。同時に対策は各国経済に大きなチャンス、新規雇用を生み出すとしました。IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告は、気温上昇1.5℃未満抑制(産業革命前比)のための累積排出許容量を新たに示し、世界で目標・対策強化がさらに必要なことを示唆しています。UNEP(国連環境計画)の「エミッションギャップ報告書」で各国目標は気温上昇1.5℃未満抑制にほど遠いとして目標・対策強化を求めています。2021年秋に気候変動枠組条約の第26回締約国会議が開催され、石炭火力が大きな議論になり、各国に2030年目標強化を求めました。この2年で目標・計画点検が行われます。IEAやUNEPなどが各国目標強化により目標がいずれも実現されれば気温上昇1.8℃抑制の可能性があると試算しましたが、具体的対策・政策に課題であり、また気温上昇1.5℃未満抑制には至っていません。今後、気候危機回避からも、脱炭素を前提にし始めた市場の要請からも、目標・対策・政策強化の議論の活発化が予想されます。
 国内では500近い自治体が2050年CO2排出実質ゼロ目標を宣言、今後2030年目標を含む具体的計画や政策強化が行われます。企業の排出ゼロ目標も増加し、サプライチェーン全体の排出ゼロ目標が増え取引先にも対策を求めるように変化がみられます。いずれも具体的目標・対策強化、政策強化が課題です。
 脱炭素は気候危機回避が主目的ですが、対策は多くのものから選択可能で、生活の質の向上・地域発展と結びつけることが可能です。脱炭素・脱化石燃料は国全体ではエネルギー自立と化石燃料輸入費全廃、地域では光熱費の地域外流出の大幅な削減が可能といえます。国でも地域でも脱炭素は多くの分野の専門家・実務家・ステークホルダー・市民が議論し、つくりあげていくものといえます。
 国内で商業化された省エネ再エネをメインとしたエネルギー起源CO2排出ゼロの研究が行われ、日本で対策が大きな地域経済効果・雇用創出の可能性が指摘されています。但しそれには地域主体が対策の担い手になる必要があり、また専門的知見の活用が必要です。政策強化も課題になります。今年は日本でもこうした議論がさらになされその具体化に一歩踏み出すことを期待します。その具体化を考えるための研究を行っていきます。