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2022.01.01 ご挨拶

【年頭所感】乾正博

 昨年末、日立製作所のウェビナーに参加し、最後にこうコメントした。
“再エネも海外技術で進めても意味がない、だからこそ日立さんは今一度風力をやるべきだ”と。日本の歴史を振り返れば、キャッチアップと改良が得意な国と言える。芥川龍之介は、短編小説「神神の微笑」で、その日本の“造り変える力”を表現している。古くは、中国からの影響を受け、明治維新後は、大きく西洋の技術を取り入れ、ロシア艦隊に勝利し、戦後は、復興と産業で世界トップレベルの産業社会を一気に築き上げた。しかし、化石燃料依存の社会は、戦前以上に進み国の安全保障や国民の生存を大きく脅かす状態にあると言える。例えば、北海道では灯油がなければ冬を越せないだろう。当然、国富も流出している。エネルギーの化石燃料の輸入額は、毎年約20兆円にも上る。円安がさらに10%進めば、さらに2兆円の増加となる。しかし、エネルギー戦略は、欧州や米国と比較して遅れているとほとんどの方が感じている。
 そんな中、脱炭素の目標を掲げ、いよいよ日本も大きく動き始めたが、相変わらず日本の技術や製品は少ない。今後再生可能エネルギーが日本に必要であるのであれば、道路や鉄道よりも再生可能エネルギーに大きな資金を投じていくことが、まさしく未来のための決断であり国家戦略と言えよう。道路は、人口減少も考えれば飽和状態であり、メンテナンスコストを税金で負担することになる。一方、再エネは、海外に流れている資金を止血することで国内に循環経済が生まれる。当然、国民が生存するためのベース機能になる。
 しかし、脱炭素を急ぎ過ぎてはいけない。移行期間が最も重要である。すでにゼロサム思考で世論が偏っているが、移行の間に国富がさらに流出しないようにしなければならない。さらに、2050年の日本におけるエネルギーの絵姿と分散型社会による経済効果を考えなければならない。いわゆる、富の分散と経済循環を希求していく必要がある。
 エネルギーは、世界的にも非常に大きな政治的ファクターであることは事実である。欧州エリアは、ロシアに天然ガスを大きく依存している。中国は、世界の権益に触手を伸ばしている。日本は、どれほどの危機感を持ちエネルギーを捉えていくか今後ますます重要となる。
2022年は、その大きな一歩になるよう当研究所としても活動していきたい。